ハブの数はどのくらい?

私のハブとの遭遇は今までに数回ほど、咬まれた経験もありませんが、「ハブは危険だから畑や草むらにはひとりで入るな」という教えはいつも頭の片隅にあります。沖縄で長く生活していても、農地や墓地との関りが弱く、都市部や商業地域で生活が完結していると、近所でハブの話題を交わすことも少ないかもしれません。

なお、この記事ではハブ、サキシマハブ、ヒメハブ、タイワンハブだけを対象に書きました。沖縄県の調査・報告もこの4種類に絞られていることが多いためです。

1979年までは年間300名以上がハブに咬まれていた

「ハブ=毒=死」が常識となっている沖縄のハブ被害はどのくらいの規模なのか、沖縄県庁のウエブページ「6.ハブの被害 ページ番号1005058」で確認してみました。このページのグラフによれば、1973年までは毎年1~7名の方々がハブの毒で亡くなられ、1979年までは毎年300名以上がハブやサキシマハブに咬まれていました。毒蛇による死亡報告ゼロが沖縄県に訪れるのは2000年から、咬まれた報告が年100件を下回ることが当たり前になるのは2001年からです。

タイワンハブ駆除は約4,000件(2025年)

沖縄県の「ハブ類駆除件数の推移(平成24年~令和7年)」によれば、2025年のハブ駆除は2,083件でした。他の毒蛇(サキシマハブ、ヒメハブ、タイワンハブ)の件数も加えれば、同年のハブ類駆除件数は6,288件に達し、しかも2012年(3,330件)の1.89倍に拡大していました。2025年、最も多く駆除された毒蛇はタイワンハブ4,071件(65%)、続いてハブ2,083件(33%)、ヒメハブ105件(2%)、サキシマハブ29件(0.5%)となっています。%は毒蛇駆除総数に占める各ハブの割合です。{この報告書において表とグラフの単位が異なる点に注意してください。表内の単位は「件数」、表の直下にあるグラフの左軸項目は「匹」です。}

ハブではなく、タイワンハブが沖縄県のハブ類駆除件数の首位であることに驚きました。この毒蛇は1970 年代から酒や粉の原料として沖縄県に輸入され、野外で初めて発見されたのは1993年の名護市とのことです(沖縄県衛生環境研究所、「タイワンハブ防除マニュアル 令和3年12月」、1ページ)。2012年にはタイワンハブ駆除件数は2位(945件)となり、2019年に初めてハブの駆除件数2,321件を抜いて1位(3,009件)になりました。この状況は今日も続き(沖縄県、「ハブ類駆除件数の推移(平成24年~令和7年)」)、2025年のタイワンハブ駆除件数は2012年の4倍以上(4,071÷945=4.31)という勢いです。

ここ10年間、年平均50名強がハブ類に咬まれる(2016年~2025年)

人間がハブに咬まれる被害(咬症被害)はどのようになっているのでしょうか。沖縄県の「【市町村別】直近10年間(2016年~2025年)のハブ類咬症被害発生状況」によると、2025年の沖縄県内においてハブ咬症(こうしょう)被害は27件でした。サキシマハブ、ヒメハブ、タイワンハブも加算すると、2025年において咬症被害は48件になります。この報告書を基に2016年から2025年までの年平均を計算してみると、52.9名が毎年毒蛇に咬まれていることになります。

住民と自治体によるハブ対策とは

2025年のハブ類駆除件数は6,000件を超えていることとは対照的に、咬症被害発生件数が50件弱である理由は、住民と自治体のハブ対策が功を奏しているからかもしれません。実は、沖縄の自治体の中にはハブ対策条例を制定しているところがあります。1980年代に那覇市・西原町・与那原町・中城村が、90年代に石垣市・伊平屋村が、2000年代に入ってからも北谷町・うるま市・恩納村・粟国村・八重瀬町などがこうした条例を定め、対策に取り組んできました。

1980年4月1日にハブ対策条例を制定した那覇市を例にあげますと、市民はハブが繁殖・徘徊しない生活環境を整備する義務があり、補修・整備に必要な材料が支給されます。ハブに咬まれた場合は役所に届けることは当然のこと、それによる治療費も支給されます。ハブの発見・捕獲・捕殺も届けの対象とされています。

自治体の中にはハブ買い上げ制を導入している例もあります。例えば、恩納村(おんなそん)ハブ対策に関する条例では捕獲・捕殺したハブを1匹当たり1,500円で、粟国村(あぐにむら)ハブ買上金支給要綱では捕獲駆除したハブ1匹につき5,000円で買い上げる規則があります。ただし、粟国村については、2026年4月1日から買い上げ金が2,000円に改定されていました(「広報あぐに 2026年4月号 NO.219」9ページより)。

2014年には沖縄県としてハブ対策事業基本計画も定められ、ハブに関する広報、防除、治療環境、調査研究を推進しています。沖縄県の随意契約実績や関連法人のウエブサイトなども調べてみると、下のように多岐にわたってハブ対策が展開されていることがわかります。

  • ハブ咬症注意報の発令
  • ハブ咬症防止運動の実施
  • 防蛇壁・フェンスの整備
  • ハブ捕獲棒、ハブ捕獲器、ヘビ撃退・殺蛇エアゾールの販売(一般財団法人 沖縄県公衆衛生協会のウエブページ「ハブ対策グッズ」)
  • ハブに咬まれた傷を治療するための製剤(ハブ抗毒素)の常備保管(沖縄県のウエブページ「はぶ抗毒素常備医療機関 令和7年8月20日現在」)
  • 副作用の少ないハブ抗毒素の開発(沖縄県、「新しい抗毒素の開発について」、『衛環研ニュース【第12号】(2006年4月)』)
  • 短時間で簡易にハブ類毒の有無とハブの種類を特定する方法の研究(沖縄県、「保健医療介護部における随意契約の実績(平成29年度 1/四半期分」など)
  • タイワンハブの分布調査・密度監視定点調査(沖縄県、「保健医療介護部における随意契約の実績 平成30年度1/四半期分」など)
  • タイワンハブ探索犬の育成(沖縄県、「保健医療介護部における随意契約の実績 令和2年度1/四半期分」など)

ハブ類の生息地は拡大中か

寺田考紀・濱川功・仲間幸俊・古謝あゆ子による「粟国島におけるハブ定着の可能性」(『沖縄県衛生環境研究所報、第57号(2023))では、かつて「ハブのいない島」と思われていた粟国島にハブが定着している可能性が指摘されています。ハブ類の生息地が拡大している恐れもあり、沖縄県の住民・自治体はハブ対策を今後も継続していくことになります。